2006年 10月 26日

マジット・マンディという監督の作ですが、あまり見ることのないイランという国の事情を少し知ることができます。特に、イランの中のアフガン難民の女の子の実情や、イランの建築工事現場のようすなど、われわれの知る由もない実情を映像で見て、お話はフィクションとはいえ興味深く、またその過酷な事実にも驚かされました。
特に良かったのは、エンディングのシーン。(あえて書きません)この映画のテーマとも思われる「無言の愛」や「どうすることもできない行方」を象徴する愛情と絶望とが混じった映像でした。
題名の髪留めは女性であることの証として使われています。
イランというとなじみのない国ですが、先日新聞の書評でイラン女性が書いた本の紹介があったので、めずらしく思い購入してみることにしました。
書店で探すのが面倒だったのとマイナーな本なので、おそらく店頭には置いていないだろうと思い、中身を見ないままネットで注文をしたのですが、数日後送られてきた本を開いてみてびっくり。けっこう「あけすけ」な内容なのです。(見ないとわからないでしょうが)ネットだったのでよく知らずに買いましたが、店頭で広げたら、戸惑っていたかもしれません。
物語は、9人のイラン女性の井戸端会議という設定で、女性それぞれが自分の男性遍歴やら人の噂話などについてあれやこれや言いたい放題おしゃべりするというものですが、こんなこと言っちゃっていいの?なんていうきわどさです。
本は絵が主体になって構成されています。著者マルジャン・サトラピという女流画家のイラストは独特で、ユーモアと毒とがミックスされた蠱惑的な画風で、黒一色の木版画のような表現です。これはなかなか素敵で、一見の価値ありです。マルジャン・サトラピはイラン生まれながらウイーンに留学し、現在はパリで活動している経歴の持ち主。だからこそ自分の国の女性をある意味客観的に、しかも滑稽に描くことができたのでしょう。
それによると、イランでは女性の地位が低く、男性優位の女性観があるようで(例えば処女性を重んじるような)、そういう社会情勢なので女性は男性に従わなければならず苦労しているようです。しかし、つつましやかに見えるイラン女性も、ベールの下のホンネは結構したたかでたくましく、日頃虐げられている反動なのか「男の鼻をあかす」ということに情熱さえ持っているのです。
また、われわれから見ると考えられないアヘンなどの麻薬が日常の中で出てくるということも驚きました。もちろんこの本の内容がイラン女性の一般的実情であれば、という大前提ですが。
題名は「刺繍」。これも隠語(ブログではちょっと言えない)のようですが、本の内容を象徴する題名です。
KEI
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| 2006-10-26 00:05
| Book & Cinema