2006年 09月 30日
ニッポントイレ事情
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「お尻だって洗ってほしい」
ピンクの桃の割れ目に下から水がかかっている、忘れもしないあのCM。今でこそウォシュレットはシャワー付き便座の一般名詞となっているが、発売当時はそんな習慣のなかった日本人にとって衝撃的だった。
「え!お尻も洗うの?」ということ。
余談だが、このワンフレーズによってコピーライターという職業が一躍脚光を浴びることになった、と記憶している。
それはともかく、出始めのころはとても高価だったシャワー付き便座も、今ではそれがない家がめずらしいくらい日本においては一般的に普及した機器である。もともと洋式便器やビデがなかった国だからなおさら浸透したのだろうが、きれい好きな日本人の感性にフィットして、家庭ではなくてはならないヒット商品となった。「お尻だって洗ってほしい」の一言が人々に訴えた力は今考えれば本当にすごかった。日本人のお尻はたちまちのうちにきれいになっていったのだ。
以前、イギリスに住んでいた日本人の友人が、ファンキーな便座があるので是非見て欲しいと言ってきた。日本の市場では見かけない商品なので、輸出すればものめずらしさで売れるのではないかと言うのだ。
送られてきたパンフレットには、座面が透明なFRP樹脂で、中にドライフラワーや木の実、貝殻などが封じ込められた凝った便座が何種類も載っていた。よくお土産物の文鎮なんかで見かけるあの作り方だ。確か、倉俣史郎の椅子にもこれと同じようにドライフラワーを使ったものがある。
私は、ずっと前に道頓堀のハーゲンダッツのトイレでこの便座を見かけたことがあったので、あれだなとすぐにわかったが、後にも先にもそこでしか実物は見たことはない。(ちなみに道頓堀のハーゲンダッツは相当ファンキーなお店なので、そこにはぴったりです)
この便座は確かに珍しくファンキーな商品ではあるのだが、パンフレットを見るやいなや思ったのは、日本では売れないな、という確信だった。
理由はあまりにも簡単。
趣味やデザインの問題ではない。機能の問題だ。日本の家庭のトイレはどこもすでにシャワー付き便座が据え付けられている。それをやめてこのファンキー便座に取り替える人はいまい。海外に長く住んでいる友人には日本のトイレ事情がとっさにイメージできなかったのだろう。
先日マドンナが来日して、「日本の便座のあたたかいのがなつかしいワ!」なんてことを言ったらしいが、たしかに便座ウオーマーも日本独自のものだ。
シャワートイレ、便座ウオーマー、それにもう一つ、これは女性にとって公共のトイレでの必需品、流水音。
おおげさだが、これらは日本独自のトイレにおける三種の神器なるものといえよう。日本人はどんなものにも快適性や利便性を追求する人種のようだ。
そろそろあたたかい便座にホットする季節である。
KEI
ピンクの桃の割れ目に下から水がかかっている、忘れもしないあのCM。今でこそウォシュレットはシャワー付き便座の一般名詞となっているが、発売当時はそんな習慣のなかった日本人にとって衝撃的だった。
「え!お尻も洗うの?」ということ。
余談だが、このワンフレーズによってコピーライターという職業が一躍脚光を浴びることになった、と記憶している。
それはともかく、出始めのころはとても高価だったシャワー付き便座も、今ではそれがない家がめずらしいくらい日本においては一般的に普及した機器である。もともと洋式便器やビデがなかった国だからなおさら浸透したのだろうが、きれい好きな日本人の感性にフィットして、家庭ではなくてはならないヒット商品となった。「お尻だって洗ってほしい」の一言が人々に訴えた力は今考えれば本当にすごかった。日本人のお尻はたちまちのうちにきれいになっていったのだ。
以前、イギリスに住んでいた日本人の友人が、ファンキーな便座があるので是非見て欲しいと言ってきた。日本の市場では見かけない商品なので、輸出すればものめずらしさで売れるのではないかと言うのだ。
送られてきたパンフレットには、座面が透明なFRP樹脂で、中にドライフラワーや木の実、貝殻などが封じ込められた凝った便座が何種類も載っていた。よくお土産物の文鎮なんかで見かけるあの作り方だ。確か、倉俣史郎の椅子にもこれと同じようにドライフラワーを使ったものがある。
私は、ずっと前に道頓堀のハーゲンダッツのトイレでこの便座を見かけたことがあったので、あれだなとすぐにわかったが、後にも先にもそこでしか実物は見たことはない。(ちなみに道頓堀のハーゲンダッツは相当ファンキーなお店なので、そこにはぴったりです)
この便座は確かに珍しくファンキーな商品ではあるのだが、パンフレットを見るやいなや思ったのは、日本では売れないな、という確信だった。
理由はあまりにも簡単。
趣味やデザインの問題ではない。機能の問題だ。日本の家庭のトイレはどこもすでにシャワー付き便座が据え付けられている。それをやめてこのファンキー便座に取り替える人はいまい。海外に長く住んでいる友人には日本のトイレ事情がとっさにイメージできなかったのだろう。
先日マドンナが来日して、「日本の便座のあたたかいのがなつかしいワ!」なんてことを言ったらしいが、たしかに便座ウオーマーも日本独自のものだ。
シャワートイレ、便座ウオーマー、それにもう一つ、これは女性にとって公共のトイレでの必需品、流水音。
おおげさだが、これらは日本独自のトイレにおける三種の神器なるものといえよう。日本人はどんなものにも快適性や利便性を追求する人種のようだ。
そろそろあたたかい便座にホットする季節である。
KEI
by kmd-design
| 2006-09-30 01:35
| Essay