2006年 06月 12日
ラピスラズリのカラーリング
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札幌の豊平館を訪れました。
豊平館は、明治13年に北海道開拓使直属の宿泊所として建てられたもので、明治天皇が宿泊した由緒ある建物です。戦後はアメリカ軍に占領されたり、三越百貨店の店舗になったりとさまざまな歴史を経て、中島公園に移築されました。現在では国の重要文化財となっています。
この建築は洋館ですが、一番気になったのは、外部のバルコニーの柵や窓枠などにペールブルーといった不思議な色が塗られていることでした。
「由緒ある建築の色彩としては珍しい色だな」
と思いながら見ていると、当時この色を出すのにアフガニスタンから輸入されたラピスラズリの鉱石が使われたとの説明書きがありました。建築でラピスラズリを使うとは、さぞかしお金のかかることですね。
偉い方の施設だったので、高価な石の色がそのまま高貴の象徴として使われたのでしょう。
ところで、ラピスラズリの原石を細かくすりつぶしたのがウルトラマリンといわれる色です。この色は17世紀の画家フェルメールの絵の中に見られます。フェルメールはブルーとイエローにこだわった画家と言えますが、こだわりのブルーを出すのに高価なラピスラズリを使っていたということがわかっています。
豊平館ではウルトラマリンをおそらくは漆喰か何かの中に混ぜて使っていたのではないかと思われます。もっとも当時の色を見ることはできませんが。
この写真の色は当然ながらラピスラズリではなく、近年移築された時に色だけが再現されたものと思われますが、一見、安価なペンションかファミレスの外壁のような軽々しい色には開拓時代からのこうした歴史があったのでした。
KEI
by kmd-design
| 2006-06-12 10:20
| 日本あっちこっち