2009年 04月 10日
生垣、今むかし
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芽吹きの季節、自然の少ない都会にあっても日常の景色が日に日に変化している。
KEI
この時期、若々しい萌黄の緑に混ざって目に付くのが真っ赤に色付いた生垣だ。これは花の色ではなく葉っぱの色。燃えるように赤いのは「ベニカナメモチ」の新芽である。
一際目立つ色のせいもあるのだろうが、特に近年この生垣が増えてきているように感じる。それもそのはず、ベニカナメモチは日本古来の植物ではなく、ニュージーランド産の外来種で、園芸用に入ってきたのはどうやら最近のことらしい。外来、と聞いたせいかその鮮やかな色がアメリカザリガニの赤を連想させる。外来種は強い。なんだか日本中の住宅の生垣がこの時期一斉に赤く染まってしまいそうな勢いである。
私の地域の自治体では生垣の保護や育成の助成制度があり、一定規模の生垣に対して保護する目的で補助金が支給される。その甲斐あってなのか、ブロック塀やフェンスが減り、生垣が多くなってきた。
思えば私が小学生の頃、生垣と言えば正木やからたち、卯の花がほとんどで、私の学校の周りの生垣はからたちだった。北原白秋の詩にも読まれるそれである。触ると針のように尖った棘が痛い。それなのに季節になるとその棘だらけの痛々しい枝に柔らかい青虫が幾つもくっついていた。それがいつしかさなぎに変わり、脱皮してある時蝶になる…そんなドラマを学校の行き帰りに見ていたのだ。
ところが、いつの頃かふと気付くと味気ない針金がからたちに取って代わっていた。空々しい薄緑色のフェンスである。
棘だけでできているような不思議な植物からたちは、造形的にも美しく、自然が生んだバリケードだった。育てにくいのだろうか?手入れが大変なのだろうか?あるいは棘が危険だからだろうか?からたちは今、身の回りから姿を消した。もちろん青虫もアゲハ蝶の姿も今は目にすることもない。
KEI
by kmd-design
| 2009-04-10 11:36
| Essay