2008年 08月 11日
デスパレートな楽しみ
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『Desperate Housewives』、ご存知アメリカの人気TVドラマだ。
NHKでの放送時、やたらインパクトが強くて気になっていたので、ビデオで見ようと1話を見始めたのが運の尽き、毎週いそいそとレンタルビデオショップに通う羽目になってしまった。
原題『Desperate Housewives』は、日本では『デスパレートな妻たち』と訳されている。
巷では略して「デス妻」。
「デスパレート」とは崖っぷちという意味らしいが、日本語には訳さずカタカナ語としてそのまま使われている。もっとも、崖っぷちの主婦たち、いうタイトルではドタバタ劇のようなイメージになってしまいそう。
『Desperate Housewives』は、どこの家庭も外から見れば平和そのもの、しかし扉の向こうは崖っぷち、というところから付いたタイトルである。次々と浮かび上がる扉の向こうの問題は、すなわちアメリカ社会全体の問題とも言えよう。
ドラマはこんな風に始まる。
ところはアメリカ郊外の住宅地、ウィステリア通り。そこに暮らす主婦、スーザン、ブリー、リネット、ガブリエル、メアリーは井戸端会議仲間である。
ある時突然、その中のひとりがピストル自殺をしてしまう。
なぜ…?仲良しだったのに誰も理由がわからない…。
サスペンス風の謎解きから展開するストーリーは、見る者をぐいぐい惹き込んでいく。
平凡で平和と思われた家庭の日常に潜むトラブルの数々。それは、夫婦間のいざこざであったり、親子のジェネレーションギャップであったり、仕事と育児、親との関係、恋愛、不倫、破局、再婚、代理母出産、未婚の母、病気、ご近所さんとの人間関係、さらには殺人、ひき逃げ、個人の性癖、ドラッグなどなど…文字通りありとあらゆる問題山積なのである。
ワンシーンは2、3分か長くても5分ほどで、4人の話がオムニバス形式で交錯しながら軽快なテンポで進んで行く。一話はおよそ45分。
彼女たちの穏やかでない日常とは裏腹に、多くのシーンは、いつも静かで平和そのもののウィステリア通りの風景と、美しく咲き乱れるウィステリア(藤)の花で彩られている。
個人のプライバシーをのぞき見るような、ともするとドロドロになりがちなテーマでありながら、全体を通して流れる空気は至ってコミカルで明るい。
美女たちの色気やライフスタイル、ファッションなども大いに気になるドラマであるが、最大の見どころはストーリーの最初と最後を飾るセンス溢れるナレーションにある。
オープニングに流れるウォーホールやリヒテンシュタインなどのアメリカ美術史のパロディーも面白い。
ビデオでは、シーズン1からシーズン3まで合わせて70話が揃っている。本国では現在シーズン4が放送中だが、その人気に押されて今後シーズン7まで続く予定とか。
崖っぷちの国アメリカが生んだ洒落たコメディー。
デスパレートな楽しみはまだまだ続きそうだ…。
KEI
by kmd-design
| 2008-08-11 11:40
| Book & Cinema