2008年 05月 21日
岩盤にピンクの色彩
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ヘルシンキの観光名所の中でも圧倒的な存在感を放つのがテンペリアウキオ教会。
テンペリアウキオ教会はフィンランドならではの地形を生かした大変優れた建築である。
この地域の地面は岩盤でできているが、その大岩をくり抜いて空間を作っているのだ。
それゆえ屋根と入り口以外、いわゆる外観と呼ぶ形が存在しない。
インテリアは岩盤を削り出したそのままの壁に、天井は平たい中華鍋のような形の銅板ぶき。壁面と天井とは自然光を取り込むガラスのトップライトで繋がれていて、屋根が浮いているようにも見えるデザインだが、今これを書いていてふと思った、雪が積もるとガラス部分も雪ですっぽり埋もれてしまうことになるのだろうか?と。気になるところだ。
また、この教会は、宗教的な威圧感や象徴性が全く感じられない。小規模なホールのような空間なのである。十字架が目に付かないほど小さいことも宗教性を感じさせない理由かもしれない。
たとえば古典的なゴシック建築の天井の高い空間と比べると、ここは神様の場所ではなく、人間のスケールを持った人のための場所といえるだろうか。
唯一教会を思わせるパイプオルガンが岩肌に取り付けられているのだが、それすらも幾何学的な彫刻のように見えてくる。
そんな中で特に印象的だったのは座席のシート色。
ご覧の通りのピンク色だが、周囲が削りだした黒っぽい岩肌ゆえ、その鮮やかな色彩が見事に引き立っている。
洞窟のようなごつごつしたテクスチャーと唯一対照的なファブリックの優しさにほっとさせられ、人間主体の温もりのある建築というメッセージが色彩を通しても伝わってくる。
家具とはいえ、ここまでピンクを美しく使っている建築は他にないのでは?
色も素材のひとつ、と常々思っているが、まさにそれを体現しているような空間であった。
KEI
by kmd-design
| 2008-05-21 21:09
| 世界あっちこっち