2011年 06月 09日
10万年後へ伝えるピクトグラム
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ドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』(原題:into eternity)を見た。
これはフィンランドの原子力発電所から出される放射性廃棄物の処分方法にまつわる話である。
ヘルシンキの西240kmにあるオルキルオトという島(現在原子力発電所がある)の地下500mの地点には巨大な放射性廃棄物の処分場が存在する。生物にとって最も危険なゴミ捨て場なのだ。
廃棄物処分場の名前は「オンカロ」。フィンランド語で隠れた場所、という意味らしい。
人類が動物と大きく異なる進化を遂げたのは「火」を扱うようになったから。そして、人類はさらに原子力発電という「火」を手に入れた。原発は第二の火だと作者は言う。
カメラは初めてオンカロの建設現場に入った。
固い岩盤をダイナマイトで爆破しながら、巨大なアリの巣状の処分場を掘り進めていく映像が映し出される。オンカロは、2020年には完成し、核廃棄物を封じ込め満杯になった段階で穴を塞ぎ、永久に葬られる。核廃棄物が人類にとって無害になるためには10万年を要すると言うから、それはつまり安全は10万年後にやってくる、ということになる。
10万年といってもピンとこないが、ネアンデルタール人から現代人までがおよそ1万年、それと比較すると、10万年先というのがいかにとんでもない長さかとわかる。そもそも今から8千年後には地球が氷河期に入ると予測されているので、その時期を超えて人類が生き長らえているかどうかすら誰にもわからない。
この作品にはもうひとつ大きなテーマがある。それは、もしも未来の人類がこの処分場を発見してしまったら、ということだ。なかなか壮大な心配事である。
もちろんオンカロは、未来永劫発見されないに越したことはないが、何らかの拍子に入り口が発見され、その時代の人々が、まるでピラミッドを発掘するように、オンカロを掘り起こさないとも限らない。彼らに危険を伝えるためにはどうしたらよいのか。言葉や文字は永久ではないから、むしろ絵がいいのではないか、というのだ。
言葉の通じない相手に有効なのは絵文字(ピクトグラム)である。原発のマークにドクロ、そして避難する人間。その三つを組み合わせたピクトグラムを記せば、危険だということが伝わるだろうという予測。
確かに、未来の人類が今とそんなに変わらない生物であり続けるのなら、ピクトグラムが何を表すものかは伝わるだろう。
しかし、だからといって開けないという保証はどこにもない。
なぜなら、いつの時代も人類は、開けてはいけないパンドラの箱を開けてきたのだから。
KEI
by kmd-design
| 2011-06-09 14:18
| Book & Cinema